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嵐絞り・藍染作家 早川嘉英 (1946-)

1946年、早川嘉英は絞り染め産地、名古屋市緑区有松町の染色を営む家に生まれました。

有松は1608年、尾張藩が東海道整備の為、入植者を募集し竹田庄九郎はじめ8名が移住したのが始まりです。
有松の土地は農業には向かず村人たちが収入を得る為に1610年、名古屋城築城に出かけた際、
豊後(大分県)の人が身につけていた絞り染めにヒントを得て、郷里の木綿の手拭いに絞りを施して旅人相手に商いをしたことが有松の絞りの始めと伝わっています。
その後、東海道の賑わいと共に旅人が土産物として絞りの手ぬぐいや浴衣などを買い求め、街道一の名産品となりました。
当時の繁栄ぶりは、歌川広重の東海道53次「鳴海(名物有松絞)」にも描かれています。
世界に誇る繊細な有松の絞りは、時代の変化と共に様々な技を開発し、形を変え、400年以上に渡って受け継がれています。 


 

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歌川広重 「東海道五拾三次之内 鳴海 名物有松絞」 (1833)

そういった歴史ある町で育った早川嘉英は、学生時代からの盟友でもある絞り作家・故 竹田耕三氏とともに時間を過ごし、1972年から本格的に絞りの世界に入りました。
高度経済成長真っ只中の当時の日本では、絞り産業も高級浴衣を始めとする需要が増え、有松絞りも隆盛していきました。

1979年アメリカのファイバーアートに感銘を受け、作家としての活動を始めます。
「絞る」ことを追求し、そこから造形を生み出す作品制作に取り組み、1981年からは日本新工芸展に参加します。
翌年、日展・明日を開く新工芸展(1982)で入賞したことを皮切りに、1983年からは名古屋、東京、京都などで次々と個展を開催しました。

当時から、失われた技法「嵐絞り」の復元を始め「表現が技法を生む」ということに着目しています。
時代と共に変化をし続け、新しいものを生み出してきた「絞り」への追求が作品の源になっています。

 

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早川嘉英によるインスタレーション  (1986)

1985年からは有松・蔵工房を拠点に、沢山の共鳴者が集まりシボリコミュニティを立ち上げました。
シボリコミュニティは絞り技法のノウハウを教える教室ではなく、各々が「絞り」と関わりながら自らの生きる道、考える道を貫く作品を制作する場所です。
その活動は東京、京都、広島、九州などに展開していき38年以上続くコミュニティとなり、国内外問わず展覧会も開催してきました。

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シボリコミュニティによる展覧会の様子  (2023) 山口県萩市

1992年には有松で開催された第1回「国際絞り会議」(ISS)の発起人として企画委員会委員長を務めました。
この会議後、世界に目を向け「ワールド絞りネットワーク」(WSN)を組織し、自ら事務局長を引き受けました。

この当時発表した「絞られた土」がきっかけとなり、絞りの形状を石やコンクリート、ガラスに表現することを試みます。
2000年代からは名鉄本線・有松駅の再開発事業にて、これらの技法を用いたモニュメントの制作監修を務めました。
高さ13mを超えるモニュメントは「藍流」(2006)と名付けられ、絞り生地を砂型へ加工し、ガラスの素材に絞り柄を映し出して作られた傑作です。
また、駅周辺通路やエレベーター壁面などにも作品は使用されており、有松駅一帯は早川嘉英作品で彩られています。

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藍流  (2006) 名古屋・有松

モニュメント完成後は、原点である「嵐絞り」の復元を本格的に取り組み始めます。
それに伴い、天然灰汁発酵建ての藍染が不可欠だということに気が付き、2021年からは「嵐絞り・藍染プロジェクト」を立ち上げました。
これは自身が出来る最終章だと掲げ、絞り染めやモノづくりの根元を伝承することが目的です。
その年からワークショップやスクールを蔵工房にて開催してきました。
さらに自身のオリジナル商品の発売を開始し、翌年、国際芸術祭「あいち2022」連携企画事業として個展「STILL ALIVE in ARIMATSU」をKONMASA BLDGで開催しました。

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嵐絞りの様子

2023年からは「ワールド絞りネットワーク」(WSN)主催で蔵工房にて外国人向けのワークショップも開催しています。

早川嘉英の造形に対する思考は「絞り染め」という仕事を通して、自分を見つめ、モノづくりの本質を解釈して生まれたものです。
それは戦後、高度経済成長からテクノロジーの現代までの激動な時代変化に「絞り」で対応してきたからこそ生まれてきた信念です。
現在、先人たちの技と知恵を原点に、時代と共に生きてきた絞り染めの新しい魅力を伝承しながらも新たな作品制作を続けています。

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WSN主催 嵐絞りワークショップの様子 (2023)

早 川 嘉  

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1946年 名古屋有松に生まれる

1981〜83年 新工芸展

1982年 日展、明日を開く新工芸展(入賞)

1983年 名古屋にて初個展、以後. 東京、京都等にて開催

1985年 蔵工房主宰、シボリコミニティ成立代表

1992年 第1回ISS国際絞り会議発起人、企画委員会委員長

1995年 SDA(サーフェース・デザイン・アソシエーション)ナシャナル会議

           ポートランドworkshopリーダー、EUジャパンフェスタ ドイツ/トリアWorkshopリーダー

2000年 纐奕の4人展(京都むろまち美術館)

2001年 清流展、シボリコミュニティ・サンフランシスコ展、有松駅自由通路ガラスレリーフ製作

2002年 シボリコミュニティ海外巡回展(タブリン.ロンドンハロゲート)

           有松交通広場エレベーター側面アルミレリーフ製作

2003年 シボリコミュニティ・オーストラリア展

2006年 有松交通広場モニュメントデザイン及び制作監修

2008年 シボリコミュニティ・フランス・リヨン展

2014年 シボリコミュニティ・プラハ展

2015年 シボリコミュニティ・愛知県美術館ギャラリー

2017年 シボリコミュニティ・広島県立美術館ギャラリー

2019年 シボリコミュニティ・高野山まちなみ美術館

アート作品一覧

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